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【古歌54】・・古歌に学ぶ生き方



   身を思う
     心ぞ身をば 苦しむる
        身を思わねば 身こそ安けれ




【歌の意味】

自分の身の安全のみを考えず、他人の幸せのことを第一に考えておれば、自分の精神と肉体の健全さは保たれるものだという趣旨です。


あの忠臣蔵で有名な大石内蔵助は辞世の句で、

あらたのし 思いは晴るる 身は捨つる
      浮世の月に  かかる雲なし


と言っていますが、討ち入りするまでの同士を思いやる苦労とか苦心からやっと解放された気持ちを歌ったものです。

このように、あまり自分の身、あるいは自分や家族のことを案じすぎると、それが苦の種になり、身も心もやせ細るものです。
すでに人間一代の運命は、それぞれ生まれた瞬間に定まっているので、今さらジタバタしても始まりません。

人間が、目の前の事態に毎日一喜一憂しているのは、自分自身の運勢を知らないからで、その運勢を知ってしまったら、心の安寧を得ることが必ずできるのです。

なぜなら、自分の運勢は外からやってきているのではなく、すべては自分の身のうちに秘めた本質から繰り広げられていることを悟るからです。


だれに不平不満が言えましょうや。

あの孔子さまが「50歳にして天命を知る」と言われていますが、われわれも50歳を越えれば天命を知った生き方をしたいものですね。




古歌に学ぶ
51 こと足れば 足るにもなれて なにくれと
足るがなかにも なお嘆くかな
52 山川の 末に流れる 栃殻(とちから)も
身を捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ
53 道のべの 草にも花は 咲くものを
人のみ徒(あだ)には 生まれやはする
54 身を思う 心ぞ身をば 苦しむる
身を思わねば 身こそ安けれ
55 いまごろに なに驚かん 神武より
二千年来 暮れていく年
56 色黒く 顔の悪しきは 生まれつき
直せば直る 心直せよ
57 知るとのみ 思い知りても なによりも
知られぬものは 己なりけり
58 雨そそぐ 軒の下石 くぼみけり
かたき枝とて 思い捨てめや
59 カネカネと 騒ぐうちにも 年は暮れ
我が身は墓に 入り相(あい)の鉦(かね)
60 もちゃつかぬ 家は餅つく 年の暮れ
もちゃつく家は 餅つかぬなり



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