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【古歌68】・・古歌に学ぶ生き方



   世の中は
    なにもいわずに いよスダレ
      その善悪は 人に見え透く




【歌の意味】

人は他人に分からないようにいろいろと細工して処世をしていますが、いよスダレのように、そんなことは透けてよく見えるものだ。


昔から「天知る、地知る、己知る」といわれますように、たとえ他人を巧妙に騙したつもりでも、天からは逃げられないし、ましてや地からも逃げられません。
たとえ天地をあざむくことができても、あなた自身が、あなたがやったことを一番よく知っているものだ。 それからは逃れようがありません。

善悪とは何を指して言うのかという疑問もありますが、善悪の基準としては、他人のためを思ってやったことか、自分の利得だけで行ったかということが境目になります。

老子のことばに、「善の善とすべきは、常の善にあらず」というのがあります。

これはあるひとつの行為を指して、その行為が常に善とはいえないということです。
たとえば、胃がんで死にかけている人に対して、あなたは胃がんであるので、あと1、2ヶ月で命の灯が消えますよ、と言ったとしたら、どうでしょう。

この人は、確かに間違って、ウソを言ったわけではありませんので、その言動は正直ではありますが、相手の気持ちを活かしていないですね。
これでは、ことばで相手を殺したのといっしょです。
こんなときは、大した病気ではないので、早く養生して良くなってくださいと、言ってあげれば、その言葉自体はウソではありますが、相手の気持ちを和ませ、明日に希望を持たせることができます。

ですから、ウソも方便で、そのときそのときに応じて、相手を思いやる心を持った言動であれば、たとえウソでも善なのです。

人生なんでも、ひとつの行為を指して善悪を決めてかからないことですね。





古歌に学ぶ
61 世の中は 流れ渡しの 船なれや
下るぞ棹は さしよかりけり
62 人多き 人の中にも 人ぞなし
人となせ人 人となれ人
63 手や足の 汚れはつねに 洗えども
心の垢を 洗う人なし
64 つくづくと 思えば悲し いつまでか
身につかわるる 心ならずや
65 世の中は ウサギとカメの かけくらべ
早いからこそ 遅くなるらめ
66 すさぶ世に 思いだせかし 古人(ふるひと)の
聖(ひじり)の歌を 生きるよすがに
67 我にある 宝を知らぬ 愚かさに
世界のものを 欲しがりぞする
68 世の中は なにもいわずに いよスダレ
その善悪は 人に見え透く
69 苦しみて のちに楽こそ 知らるなれ
苦労知らずの 楽は味なし
70 有りという 人に地獄は なかりけり
無しと思える 人にこそあれ



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