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【古歌3】・・古歌に学ぶ生き方



   夫には
     従うものと 知りながら
       夜のみとこそ 思いしぞ憂(う)き




【歌の意味】

夫には従うものとは、頭の中で分かっていたが、夜だけ夫の言いなりになっていたら良いと考えていた。だが、この考えは間違っていたと、やっと気が付いたときの歌であります。


この世の中には夫婦の関係ほど、不思議で微妙なものはありません。

結婚は一つ屋根の下で他人同士の男女が一緒に暮らすことになるわけですから、宿世の縁としか言いようがありません。

人間は感情の動物であり、誰にでも好き嫌いの思いはありますが、好きな人と結婚できる人、さほどでもないのに、結果的に結婚してしまう人、これ、ともに宿世の縁であります。

しかし、好き者同士が一緒になったのに、結婚はいつしか破れ、嫌いな相手と一緒になって夫婦げんかも絶えないのに、一生縁が続いたという夫婦は枚挙にいとまがなく、縁とはまことに摩訶不思議なものであります。

良かれ悪しかれ、一本の赤い人で結ばれること自体、ただごとではありません。

このただごとでないことを十分理解された上で、より夫婦の絆(きずな)を深めるところに人間の価値はあるのではないでしょうか。
それなのに一時の感情のおもむくまま、せっかくの生活の土台を根本から崩すのは、これほどやりきれないことはありません。

無理に別れ、互いの胸に、生涯癒しきれないキズを与え、悪くすると、来世にもつながりかねない恨みを抱きながらの、その後の生活は、よほどの幸運に恵まれた人でない限り、ウマクいくことは少ないと言えましょう。

近頃の風潮は、離婚が当たり前のようになっていますが、夫婦生活はお互いの精神を高めるための道場でありますので、夫婦げんかもあり、愛し合うこともあり、労り合うこともあって、そのなかで、夫婦としてのあり方を学んでいくものです。

そして、最後に、夫婦道を極め、死ぬ間際に夫婦としての免許皆伝が天から授けられ、「お前がいたからこそ、わしは人生を100倍楽しめたよ」と言って、楽しい思い出のみを心にいっぱい詰め込んで天寿を全うしたいものですね。 






古歌に学ぶ
1 世の中を 安々渡れ 古人(ふるひと)の
聖(ひじり)の文を 道のしるべに
2 世は 海よ 身は浮き船よ 心をば
舵とぞ思い 心して漕げ
3 夫には 従うものと 知りながら
夜のみとこそ 思いしぞ憂(う)き
4 女房は 愛するものと 知りながら
昼は粗末に せしぞ愚かや
5 芋を見よ 子に栄えよと 親痩せて
えぐうなったり 甘うなったり
6 苦と楽の 花咲く木々を よく見れば
心の植えし 実の生えしなり
7 井を掘りて あと一尺で 出る水を
掘らずに出ずと 言う人ぞ憂き
8 世の中は 月にむらくも 花に風
思うにわかれ 思わぬに逢う
9 火の車 作る大工は おらねども
己(おの)が作りて 己が乗り行く
10 すこしずつ 盃に入る 酒なれど
家田畑も ついに傾く



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