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【古歌89】・・古歌に学ぶ生き方



   愚かなる
    恣意の炎を 噴きたてて
        我と迎うる 火の車かな




【歌の意味】

何の考えもなしで、自分勝手に腹を立て、腹たちまぎれに怒りをぶちまけて、自分自身で運勢を悪くしたという趣旨です。


恣意とは、気随気まま、自分の気持ちのおもむくままにすること。
自分勝手に腹を立てて周囲に当たり散らかしていると、いずれは自分で向かえた火の車に乗らなければならなくなり、やがては人びとに見捨てられ、自然に孤立無援となるか、極端な貧乏暮らしを強いられる結果になるといいます。

火の車とは、カネがなくなって尻に火がつき、燃えさかることです。
ちょうど、サラ金の追い立てに会い、少しの気の休まることもなく、戦々恐々として、その日その日を送るようなものです。

人は、どれだけ偉くても、社会の中でしか生きられない宿命を持っています。
だから、生きていくのには、どうしても他の人と何らかのつながりを持たなければならず、ある場合には強制的とも言えるくらいの強い協調性が必要です。


したがって、どのような場合も協調性がなくては、一日として生きていけないことを知らないといけません。
このような仕組みの社会で、自分勝手な考えや自己中的な行動が通用するはずがなく、いわゆる、「山出しの丸太ん棒的な人間」には、大変暮らしにくい社会になっています。





古歌に学ぶ
81 世の中は 虎狼も ものならず
人の口こそ なお勝りけり
82 世の中を 四尺九寸に なしにけり
五尺のからだ おきどころなし
83 足元の 道を忘れて 荒岩づたい
谷間奥山 ふみまよいつつ
84 霜を経て 匂わざりせば 百花(ももはな)の
上には立たじ 白菊の花
85 わが心 鏡に映る ものなれば
さこそ姿の 醜(みに)くかるらめ
86 アザミ草 その身の針を 知らずして
花と思いし 今のいままで
87 世の中に 蒔かずに生えし ためしな し
蒔きてぞついに 運や開けん
88 春の夜の 闇はあやなし 梅の花
色こそみえね 香りやはする
89 愚かなる 恣意の炎を 噴きたてて
我と迎うる 火の車かな
90 気もつかず 目には見えねど いつのまにか
埃(ほこり)たまるは 袂(たもと)なりけり



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