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これは世にいわれる生(しょう)・老・病・死の四苦に、愛別離苦、怨憎会苦(おんぞうえく)、求不得苦(ぐふとくく)、それに五陰盛苦(ごおんじょうく)の四つを加え、人生の八苦とされています。 生きるのも辛いし、老いるのも辛いし、病むのはなお辛いし、そのうえ最後には死ななければならないのでは「人間とは一体ぜんたい何物なの?」と問いかけたくなるのも人情です。 そのうえ、外に対しては愛するものと別れたり、怨みや憎しみを抱くあいてとのやむにやまれない縁があったり、カネや住まいや、あるいは夢中になって打ち込める好きな仕事にめぐりあえない等々、求めて得られない苦しみに加え、内に対しては五陰(五蘊ともいう)と称される次のようなものもあります。 一、色(しき)【眼・耳・鼻・舌・身による各種の感覚】 二、受(じゅ)【外界の一切の印象を身で受け心で受け、楽として苦として受ける心理作用】 三。想(そう)【発想・想念・感想・妄念・欲望など、多くは是非善悪を判断する心の動き】 四、行(ぎょう)【日常一切の行いや振る舞い、行業・所業】 五、識(しき)【眼・耳・鼻・舌ならびに身識や意識により天下一切の事物・事象を認識する心】 の五種の心の働きによる、どちらかと言えば苦のことばかりの、この世を生きていかなければならない人間にとって、果たしてどのような解決策があるのかと、つくづく考えさせられる昨今ですが、ここに幾世代にもわたって古聖前賢が極めて有意義な言葉の数々を残してくれています。 とにかく、これらの言葉を頼りに、「やすやす渡れ!」と確かな羅針盤を示してくれているのだから、これほど心強いことはありません。 ★ 天一水を生ず・・古言 この言葉を解説する前に「一」という字がどうして生まれたかを知っておくことも大切でしょう。 世の中はなんでも「一」という数が持つ単位から始まっています。とにかく「一」という数の基本概念がなければ何事も始まらないのです。そしてこれには、 ★ 『一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生じた』・・・古言 との言葉があります。 この「天一水を生じる」とは原始地球の最初に雨が降ったことを指します。その後、雨は蒸発と降水を繰り返して陸地と大洋ができあがり、水と光と気温に恵まれた地球は太陽系宇宙で唯一の楽園として現在の美しい姿になったということです。 古文によりますと、この雨は最初北の方角に降ったらしく、よって水の本来あるべき位置は北とされたのです。 たとえば、背中の「背」という字は北の方角に背中(腹部を前とした肉体の反対)を向けるとして作られた字で、「南」とは万物が生え出ずる方角を意味している字です。 ★ 『君主は南面する』・・・古言 との古言がありますように、天子が北を背に、南に向けて座る状態(南は明るいので誰でも明るい方に本能的に向く)からこの言葉ができたのです。つまり、一とか背とか南面とかの文字やその他の文字はみな、それなりの理由で地上にしか住めない人間との関わりを言い当てていて、人間を考える場合、このことは非常に大事です。 ★ 『大いなるかな人間』・・・古言 「一」の字が持つ意味で、この場合の「一」は大地を表わしています。 大地から一本の茎が伸び芽が出て「上」の字が作られ、大地から一本の根が出、それからもう一本の根が出て「下」の字が作られました。この場合の「|」は「上」の字では茎、「下」の字では直根を意味します。 そして次に大地の「大」という字ですが、「大」とは大いなるものの意で、人が両手両足を広げて前に向かって立つ姿をもって「大」とし、そして太古、聖人は、『天地に次いで大いなるものは人間である』と宣言したのです。
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